こんなにちがうヨーロッパ各国気質

普通の人は、海外旅行にやたらめったら行けるわけでもないし、外国に暮らすなんてこともまれ。
だから、よその国の生活を綴った本を読んで海外気分を味わうのがお勧め。



『こんなにちがうヨーロッパ各国気質―32か国・国民性診断―』 
    片野優・須貝典子/著  2012年 草思社

こんなにちがう ヨーロッパ各国気質 32か国・国民性診断


〜みんなちがって、みんないい?〜


32か国‥。まずこの数字に驚いた。普段“ヨーロッパ”と漠然とひとくくりに思っているけれど、そこに32もの国があるとは。恥ずかしながら非常に初歩的で素朴なカルチャーショック。(本書で触れられていない国もあり、実際の国の数はそれ以上。)


よその国のくらしぶりがわかる本は楽しい。
本の内容は、それぞれの国の成り立ち・歴史から、お国柄、人々の特徴、クスリとさせられるエピソードなど。情報量は多いがバランスがよく文章も読みやすい。
一般的なところでは、ドイツ人は規則重視、スペイン・ポルトガルではお昼寝の習慣がある、などとあり、よく言われていることだが、実際本当にそうなんだ、と思った。そういった話が32か国分、ずずずいと、蔵出し、開陳されている。

在欧20年で各国を訪問し取材を重ねている著者たちが、直接経験したことや友人からの話もまじえて書いているだけに、遠い国のことでなく、ちょっとした世間話のように身近に感じられる。そしてそこから、文化や社会情勢、新聞やニュースで伝えられているような政治・経済までわかるのが面白い。


ローマ帝国”とか“オスマントルコ”とか、世界史で出てきた色々な単語も多数登場して勉強になるのだが、それはさておき、アフターファイブを楽しむウィーンの人々の輪の中に加わったかのような錯覚を味わったり、ノルウェーのように、ネット上に全国民の住所・氏名・年収・電話番号が公開されている国の住民になったらどうしよう、と取り越し苦労をしたり、などという妄想の翼を広げての楽しみ方もある。(私の楽しみ方です。)

随所にエスニック・ジョークが紹介されていて、国によってこんなに違うんだと感心する。


周辺の島々の領有権を巡り、このところ大騒ぎの島国から見ると、ほとんどの国が陸続きで国境線に四方八方囲まれているヨーロッパの国々が(長い歴史の中で諍いを繰り返しては来たが)今日こうやって均衡を保っているのは奇跡のようにも感じる。‥と思っていたら、欧州連合EU)がノーベル平和賞に決定(2012年10月12日)。本当に奇跡に近いのかもしれない。

この本の逆バージョン、向こうからみたアジアの国々の本があったら読んでみたい。と、外国に関するものを読むと、結局は最後に自分が住んでいる国に戻ってきてあれこれ考えてしまう。名付けてブーメラン現象。国の元気がなくなった時、新たな活路を模索し四苦八苦するのはどこでも同じだから。