2015年みたものリスト〜映画篇

去年みた映画のリスト。4本だけだけど(←訂正5本'16.4.30)、どれも面白かった。
3月の『はじまりのうた』の感想を書いていたら長くなってしまったので、ひとつだけ別にあげることにして、ひとまずアップします。。




2015年3月 『はじまりのうた』 ジョン・カーニー脚本/監督 (2013年アメリカ)

はじまりのうた-オリジナル・サウンドトラック  感想はまた後日‥



4月 バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡) アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督 (2014年アメリカ)

バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡) オリジナル・サウンドトラック [ (オリジナル・サウンドトラック) ]  かつて「バードマン」というヒーロー映画でスターだった俳優、リーガン(マイケル・キートン)。今では世間から忘れられている彼が、再起をはかるべく、ブロードウェイの舞台に自身の演出・出演で作品を上演させるため悪戦苦闘する‥

バードマンが主人公の後ろにくっついて歩いていたり、指を鳴らすと火花が飛んだり、はたまた自分が空を飛んだりするシーンをテレビの映画紹介のコーナーで見ていたのだが、そういう派手な映像は割合からいえば控えめで、カメラの長回し‥っていうんでしょうか、一人称の視点でず〜っと映しているシーンが多く、独特の緊迫感。加えて、全編を通して鳴り続けるドラムロールが、心をざわつかせるリズム。

実際に舞台の上で劇が演じられている場面を、出演している俳優のアングルで映されたり、またそこから客席の様子が見えたり、自分がステージ上に立っているような感覚。役者の経験はないけれど、緊張した。

ブラックユーモアが効いていて、心象風景なのか、現実の光景なのか、境界が曖昧なままの臨場感で最後まで息をつかずに観た。

エドワード・ノートン演じる、代役で呼ばれた才能ある俳優マイク、この人がわがままで傍若無人で。業界(?)のことは知らないけれど、こういう人いそう。


アカデミー賞を何部門も受賞してシネコンで上映されたのだけれど、私が観た回は観客数が淋しかった。単館上映向きの作品では、と思った。



5月 駆込み女と駆出し男  原田眞人/監督  2015年/日本

駆込み女と駆出し男 感想は別記事に



9月 『ラブ&マーシー ビル・ポーラッド監督 (2015年アメリカ)

[rakuten:book:17698987:image] ザ・ビーチ・ボーイズブライアン・ウィルソンのお話。若き日のブライアンをポール・ダノ、それから20年後のブライアンをジョン・キューザックが演じ、1960年代と80年代と二つの時代を行きつ戻りつしながら話が進む。(二人の俳優が、あまり似ていないので初めは戸惑う)

「楽しい曲も全部悲しい」‥映画の中で誰かがこんなセリフを口にする。私はここで膝を打った。ビーチ・ボーイズの曲に私が抱いている感情をセリフにしてくれた、と思った。“サーフィン・U・S・A”も“グッド・ヴァイブレーション”も弾んでいるのになぜか悲しい。アルバム『ペット・サウンズ』を聴き終えたあとも、もの哀しい。

映画は、青い空、青い海、プールを背景にしつつ、それとは裏腹なブライアンの苦闘のストーリが展開されて、ザ・ビーチ・ボーイズの音楽の世界と二重写しになっている印象、そこがよかったと思った。

1960年代のグループ絶頂期に、ブライアンはプレッシャーから薬物に逃避し精神に変調をきたしてしまうというあたりは、今まで色々言われていて私もある程度知識はあったが、80年代の再生のための壮絶な闘いについては全く知らなかった。迫力で描かれていた。

ザ・ビーチ・ボーイズのヒット曲も、もちろん楽しめる。60年代のレコーディングのシーン、ブライアンが思い描いたアレンジを実現させるため、採算無視で様々な楽器と演奏者を集める、ヴァイオリンなどの弦楽器もずらりと並んで、そして録音が行なわれる、今のようにレコーディング技術が発達していない時代の一幕が楽しかった。



9月 『ルンタ』 池谷薫監督 (2015年日本)

池谷薫監督のドキュメンタリー映画。舞台はチベット。とにかく映像が美しい。
中国政府による圧政に対して“非暴力の闘い”を続けるチベットの人々と、彼らを支援する一人の日本人・中原一博さんを、この映画は描いている。ニュースではほとんど報じられることのないこの国のこのような現実を私は知らなかった。今もあとを絶たないという“焼身抗議”。ショックだった。

ただ、重いテーマでありながら、重いだけでなく、チベット人の心のありよう、気高さ、暮らしぶり、チベットの良さ、言葉にできないほどの自然の美しさがスクリーンいっぱいに描かれている。

ドキュメンタリーの案内役の中原さんは、インド北部の町ダラムサラ在住。“非暴力の闘い”当事者や当事者周辺の人にチベット語でインタビュー。
彼がヨガをやっているシーンもあり、その達人ぶりに驚いた。

合間に、政治がらみのコンサートの場面があったのだが、ステージ上を子どもが走ったりするような大らかさが微笑ましく思えた。


前半はダラムサラ、後半は、チベットへのロードムービーのようになった。延々と続く緑の大地、壮観。そこで出会った、馬に乗った青年たちもイケメン。
「日本人って、どこでも旅ができるんだ。」その中の一人がつぶやいた言葉が心に染みた。

草原に色とりどりの旗がはためいている光景からは、実際に風が吹いてくるよう。

観終わった後でもやはり、チベット美しい国だと感じて、だがそう感じることは不謹慎ではないかと後ろめたくも思った。

この映画は試写会で観ることができたのだが、監督が会場に見えていて、試写の後にお話の時間があった。その中で、映画を観てチベットを好きになってほしい、という言葉もあり、私はほっとする思いがした。