はじまりのうた

去年3月に観た映画。2015年に観た映画を先週書き出していて(一つ前の記事↓) 今頃‥なんですが、感想をアップ。。



『はじまりのうた』 

ジョン・カーニー脚本/監督
2013年/アメリ

はじまりのうた-オリジナル・サウンドトラック


 〜ニューヨークの音楽映画〜


映画は“映像”と“ストーリー”でできている、と普段何となく漠然と思っている。しかし、この映画の場合は“音楽”がないと成り立たない。映像、ストーリー、音楽が溶け合っている。

無名のシンガーソングライター・ギター女子、グレタ(キーラ・ナイトレイ)と彼女の才能に惚れ込んだ落ち目の音楽プロデューサー、ダン(マーク・ラファロ)。ダンがグレタを説得して二人でアルバムを作ることになるのだが、それは果たして世の中に出るのか、世界を変えられるのか‥。と、大雑把にいえば、そんな話。


冒頭は、ロンドンから出てきたグレタが、ニューヨークのバーでギターの弾き語りをしているのを、ダンが偶然見かけるシーン。

前半は、遡って、そのバーのシーンに至るまでのお話が、ダン・バージョンのストーリー、グレタ・バージョンのストーリー、それぞれ描かれる。
後半は、アルバムを作るためにニューヨークの街あちらこちらに神出鬼没、無許可で突撃レコーディング。ビルの谷間や地下鉄の駅‥etc.

とにかく音楽が生まれて出来上がって行く過程が体感できて、音楽好きの私は嬉しかった。


グレタは真っすぐな性格、飾らないファッション(でもキマっている)、ダンは人生に疲れたかんじを醸し出している愛嬌のある人物。
グレタの別れた恋人、やはりシンガーソングライターのデイヴ(マルーン5のヴォーカル、アダム・レヴィーン)とのあんなことやこんなこと、ダンの別居中の妻や娘のあんなことやこんなことも絡んで、全篇生き生きしている。登場人物それぞれの、その時々の感情が直に伝わってくるような。


同じ曲でも、キーラ・ナイトレイが、シンプルなアレンジでささやき系ヴォーカルで歌うのと、アダム・レヴィーンがマルーン5よろしく歌い上げるのとでは全く印象が違う、というのも面白かった。(女優キーラ・ナイトレイの歌唱の魅力も驚き)


それにしても。
シンガーソングライターは、私小説家なのか、と思った。
心情を歌詞に託してギターで弾き語りをするグレタ。グレタの恋人(だった)デイブの曲も、第三者にはわからないながら私小説風だったため、彼と彼女の間に大きな波紋が広がってしまう。
シンガーソングライター同士のカップルは大変だ。


グレタのアコースティック・ギター&ヴォーカルに、ダンのアレンジで、ドラム、ベース、エレキギター、キーボードが入って、更にチェロやバイオリンのストリングスも入れていく、このシーンがとても好きだった。


脚本と監督はジョン・カーニー。過去の作品『ONCE ダブリンの街角で』(2006年)も音楽の映画だった。映像、ストーリー、音楽が静かに溶け合っていた。押しつけがましいところが全くない映画だったのを思い出した。