KANOーカノー

昨年観た映画の「追いかけ再生」第3弾。

これも2016年10月鑑賞。


KANOーカノー1931 海の向こうの甲子園』
監督:マー・ジーシアン
プロデューサー:ウェイ・ダーション
        ジミー・ファン  
脚本:ウェイ・ダーション
   チェン・チャウェイン
2014年/台湾

KANO-カノ-1931海の向こうの甲子園 [レンタル落ち]



〜座席から腰を上げて 白球の行方を追ってしまう映画〜


映画の内容は、タイトルとサブタイトルの通り。

KANO―カノ―」→台湾の嘉義農林学校の略称“カノ”
「1931」→1931年
「海の向こうの甲子園」→“海の向こう”とは、日本統治下の台湾のこと。


台湾の高校の野球チームが甲子園出場を果たしたというお話。

嘉農(カノ)の野球部は、今まで一勝も挙げたことのない弱小チーム。その監督に元松山商業野球部監督の近藤兵太郎(永瀬正敏)が請われて就任する。彼は、台湾人、台湾原住民、日本人の3民族混成チームを作り猛特訓、快進撃で遂には甲子園(兵庫県の)の決勝まで勝ち上がる‥という実話を基にした映画。
(映画のHPによると“台湾人(漢人):中国大陸から移住した漢民族の子孫”“台湾原住民:台湾の先住民族の正式な呼称”)



2014年、台湾での大ヒット映画だとか。

単なるスポ根ものではなく、時代背景も絡めて、また時系列のシャッフルもあり重層的な作り。

土のグラウンドでの砂まみれの練習(或いは、雨中で泥まみれ)や、試合の臨場感、街頭のラジオで中継を聴きながら街全体で地元の野球部を応援する熱狂のシーンなどダイナミック、ふぅっとしたユーモアもあり、野球好きにはたまりません。

三時間の長尺ものだが、最後の一時間は甲子園の決勝戦のシーン。打球音、スタンドの歓声。息をつめて、実際の試合を観るような感覚。ここにくると、私はもう「映画鑑賞」ではなく「野球観戦」をしていた。
外野に高く高く飛んだボールを腰を上げて追った。ファールなのか、ホームランなのか?!


田園風景や、嘉義の街並み、球場の佇まいなど映像がいい。(一部CGかも?)

市街地で、一台のラジオの甲子園中継に大勢が耳を傾けている場面は、パブリックビューイングじゃなくて、何て言うでしょう。アナウンサーの発言に腹を立てて、一人の男の人が立ち上がりラジオに八つ当たりしそうになったところ、おかしかった。気持ちがわかった。


途中、甲子園で嘉農と対戦し敗れた日本人投手がフォーカスされる場面があり、そこでは180度視点が変わったような気がした。(ウィキペディアによると、その投手は錠者博美(じょうしゃ ひろみ)演じたのは青木健)彼の後年の様子(第2次世界大戦中)も流れ、おぉと思った。



水田を潤す灌漑施設「嘉南大圳 (かなんたいしゅう)」を完成させた日本人・八田與一役は大沢たかお。嘉農の野球部員たちを励ます人物として描かれていた。

監督・近藤兵太郎役の永瀬、ノック練習がさまになっていて、野球経験者か。かっこよかった。(ずぼんの腰のあたりから後ろ側に白いタオルを垂らすなどというおじさんっぽい恰好をしても、おじさんっぽくならない)
彼の妻役は、坂井真紀。からっとしていて、好感が持てた。


エースピッチャーは呉明捷、あだ名はアキラ。演じたのはツァオ・ヨウニン。日焼けした精悍な顔立ち。大きく腕を振って速球を繰り出す。現役の大学生&野球選手で、演技経験はこれが初めてなんだとか(映画HPより)。投球シーンでのほとばしるエネルギー、淡い恋のエピソードなどもあり、なかなか魅力的。
気づいたら、アキラを始め、選手たちを地元の野球チームを応援する気持ちで見ていた。
選手たち(選手役たち)は、役柄から純朴な雰囲気を出していた。ただみんな小顔。骨格は今時の若者だった。

選手もほとんどが実在の人物であることは、映画のラスト部分での紹介でも知れる。時空を超えて胸にじんわり迫ってくるものを感じる。
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この映画を観終え劇場を出て、夕方、ラジオのスイッチを入れると、プロ野球の試合中継が流れてきた。(2016年パシフィック・リーグクライマックスシリーズ ファイナルステージ:ファイターズvs.ホークス)こちらはこちらで応援に力が入ってしまう。すると映画鑑賞と現実の継ぎ目が揺らいでわからなくなったような感覚で、それはそれで楽しかった。