ニッポンのちゃぶ台〜その1
NHK総合 午前8時〜8時15分
午後0時45分〜1時(再放送)
友人Aの電脳上のつぶやき「小林薫が関西弁をしゃべっているのって、はずれがないと思う」
NHKの朝のドラマのこと。これを目にしたのが10月の初旬であった。
へ〜どれどれ。と思って、TVつけてみると。
「許さん!」(とか何とかいって)ちょうど、小林薫がちゃぶ台をひっくり返しているところだった。
ナイスタイミング。
朝ドラみる習慣のない私ですが、その日以来欠かさず観ている。録画してまで観ている。
お約束通りのきれいなちゃぶ台ひっくり返し‥をできる人はそんなに多くないと思う。
ドラマはファッションデザイナー・コシノ三姉妹の母、小篠綾子がモデル。
昭和初期の岸和田が舞台で、主人公・小原糸子(尾野真千子)は呉服店の長女。
つまり、糸子の“お父ちゃん”、呉服屋のおやじ、が小林薫。
私がいきなり目撃した“ひっくり返し”の場面は、糸子が女学校をやめて(!)「パッチ屋」で働きたいと言い出したからのようだった。「パッチ」というのは、ももひきのようなものらしく、「パッチ屋」にはミシンがある(なつかしの足踏みミシン)。 洋服の魅力にとりつかれた主人公は、全てを投げ捨ててでもミシンをマスターしたいのだ。
この小林“お父ちゃん”は頑固一徹‥というわけではない。様子をうかがっては顔色を変えずに態度を変えることができる商売人。
家族に対してどなり散らす、心配そうにこっそり娘を見守る、突っぱねる、妥協する、酒に酔って上機嫌‥そんな大きな振り幅を平然と、飄々と、何食わぬ顔で行き来している。
謡曲をたしなみ時々うなっているシーンも好きだ。最近では、呉服屋がすっかり不景気で、「びわの葉温灸」なんか始めている。
お父ちゃんを怒らせるポイントがあり、じりじり沸点に近づいていっているのは観てる方にもわかる。そして最後に爆発「やかましい!」
観ている方は“やった〜”と一種爽快感さえ感じてしまう。
怒りにしても、ほろりとほだされるにしても、こうなるだろうと、うっすら読めるような“王道”をきっちり手堅くやってくれるのは気持ちがいいものだと思う。
番組のもう一つの魅力は音楽。
オープニングはヴァイオリンのハーモニーから、ワルツが始まる。可愛いらしい声の女性ボーカル。
誰だろう‥ ‥椎名林檎だった。
普段流れるは2フレーズだけなんだけど、月曜はサビの部分もかかる。サビは4拍子で静かに盛り上がるかんじ。それからまた自然にワルツに戻る。
穏やかさの中にエネルギーを湛えている調和のとれた曲だ。
(詞・曲・唄:椎名林檎)
ドラマの中の音楽は佐藤直紀。
あっ。「龍馬伝」の音楽の人と一緒!無国籍風、ワールドミュージック風な曲がとても印象的だった「龍馬伝」。今回はオーソドックスな曲調が中心だけど、やっぱり色んな楽器を使っている。タンゴっぽい時はバンドネオンだろうか。アイルランドのヴァイオリンはフィドルという名だっけ。インドのシタールのような音も。(インドの楽器はシタールしか知らないので違うものの可能性あり)
個性的な音色であっても、昭和初期のドラマに合っている。
脚本:渡辺あや。デビュー作の映画「ジョゼと虎と魚たち」はたまたま観ていた作品だ。
そして、ヒロインを演じる尾野真千子は、とても溌剌としていて、いきいきしている。
男勝りの役だけど、ちょっと大地真央を思わせる美貌で肌がぴかぴか。
朝ドラにありがちな猪突猛進タイプの主人公でありながら、嫌味ではなく地に足がついている。きれいで演技もしっかりしている若い人がいるんだなと思った。
脇を固める俳優たちも、はまっていて、安心して楽しめますよって。
ここに、小林“お父ちゃん”が登場すると盤石で、出番ない日はちょっと淋しい気がしてしまいますよって。
「〜よって」というのが口癖になりつつある。