「マンマ・ミーア」

やっと梅雨。恵みの雨だけど、うっとうしい季節でもあります。
こんな時はスコーンと明るいミュージカル映画。。。といってもまだDVD化されていない?


3月某日『マンマ・ミーア!

マンマ・ミーア! [DVD]

〜昔のメリルは忘れましょう〜

宣伝文句の通り、歌って踊りだしたくなる楽しさ。ひとたびミュージカルの世界に入ってしまえばだが。

そう、スクリーンの中で突然人が歌いだすのって、やっぱりびっくりする。それもあのメリル・ストリープ。オーバーオール姿でガタがきた古いホテルの修繕に手を焼いていたかと思うと、次の場面ではベッドの上で飛び跳ねて踊る。歌う。呆気にとられている間に話は進んで、やがてこちらもだんだんその気になって、うきうきしてくる。この魔力は何だろう。底抜けに明るく豪華に徹底的にやってくれているからかも。

エメラルドグリーンの海に囲まれた美しい島。そこで小さなホテルを経営するドナ(メリル・ストリープ)はシングル・マザー。ホテルというよりギリシャ版民宿旅館といった趣。結婚式を控えた一人娘ソフィ(アマンダ・セイフライド)は、まだ見ぬ父をつきとめるため昔の母の日記からパパ候補3人を割り出し、式の招待状を発送!その3人は、いずれも20年前のドナのひと夏のお相手。娘に母親の若い日のそんなことを知られていいんでしょうか。そんなこんなで元カレ中年男3人が小さい島に集結、ほかに結婚式のためやってきた女性2人はドナの親友で昔の音楽仲間、それから新郎とその友人たちも巻き込んで、老いも若きもすったもんだ。

全編アバのヒットチューン。耳に馴染んだ良質のポップスは偉大だ。
歌い手たちもいい。

ソフィ役のアマンダ・セイフライドは、憧れの結婚に目を輝かせはじける若さと、のびやかな歌唱が魅力だ。
ドナの古くからの友人は二人とも(ジュリー・ウォルターズクリスティーン・バランスキー)全てにわたり芸達者。
父親候補3人は(ピアース・ブロスナンコリン・ファースステラン・スカルスガルド)もちろん演技は余裕で持ち味を発揮、クスリとさせられ、歌は三者三様でうまいとは言えないが個性的に聴かせる。(ただ007ジェームズ・ボンドにはあんまり歌ってほしくないという気持ちも残った)

そして特筆すべきは、やっぱりメリル・ストリープ
歌がかなりいい。低めで張りのある声。アップテンポの曲もバラードもいける。民宿の女将さんぶりも板についている。今更ながらだが、この人は一体何者だろう。怪物級だ。「ディア・ハンター」「クレイマー・クレイマー」「マディソン郡の橋」(一昔前のラインナップばかりでごめんなさい)全てを脱ぎ捨てている。だから観る側も脱ぎ捨てなければ。時々何かがひっかかるけど。
アカデミー賞受賞の名優、でなくて、「ドナ&ダイナモス」(劇中のボーカルグループ)のリードボーカル・メリルが、このたび映画に初出演しました、と勝手に自分の頭の中で事実を書き替えたりした。その方がしっくりくる。あの歌いっぷりは。

ミュージカルは、舞台より映画の方が難しい。多分。少なくとも観る側にとっては。無意識のうちに舞台より映像の方に、よりリアリズムが求められるせいで。
しかしその難易度の高さを、楽園と化したギリシアの青い空青い海と、出演者・音楽ひっくるめた突き抜けた総合力で、力技でねじ伏せてしまった。
知らず知らずに手足が、心が弾んでいた!脱帽。


マンマ・ミーア!』2008年/アメリ
監督:フィリダ・ロイド
出演:メリル・ストリープ アマンダ・セイフライド ピアース・ブロスナン コリン・ファース ステラン・スカルスガルド ドミニク・クーパー
 ジュリー・ウォルターズ クリスティーン・バランスキー