ガラスの動物園

暖冬、一転初雪(昨日)、そしてまた明日から気温が上がるそう。

新型肺炎の流行も心配。

 

2月も、観劇スケジュールだけは順調にこなしていますが、1月に観たお芝居の感想を一つアップします。

 

 

 

身体的にバラエティあふれる人たちの演劇公演  ワークショップシアター

       『ガラスの動物園

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当日配布の番号札とリーフレット


企画:森山 淳子(認定NPO法人ニコちゃんの会)

   倉品 淳子(劇団山の手事情社

 

○ワークショップ

ファシリテーター:倉品 淳子

出演:すっごい演劇アートプロジェクトのみなさん

 

○演劇『ガラスの動物園

原作:テネシー・ウィリアムズ

演出:安田 雅弘(劇団山の手事情社

   小島 美紀(座“K2T3)

出演:山口 恭子(演劇作業室 紅生姜)

   倉品 淳子

   廣田 渓

 

ケアスタッフ(リーダー):井上 直己

 

日時:2020年1月24日(金)19時~

会場:福岡アジア美術館あじびホール

 

 

障がいがある人たちと、年齢が高い人たちが一緒に舞台をつくり公演を行っている、そんなチャレンジングでユニークな取組みのことは以前から聞いていたが、友人に誘ってもらって今回初めて観に行った。その友人は、数年前から毎回観ているそう。

 

前半がワークショップ、後半がお芝居という公演だった。

 

会場は、小ぢんまりとした長方形のホール。そのホールの長い辺の方に舞台のスペース(段差はない)。その左右に長机、上方にスクリーン。舞台の反対側に3~4列くらい、横に長く客席が設けられている。舞台との距離が近い。

 

まず、ワークショップのパート、稽古の様子が紹介された。舞台側には車椅子ユーザーの人たちや、シニアの女性たち、計7~8人。全員、全身黒の出で立ち。ファシリテーターの倉品淳子さん(福岡出身の女優)は威勢のいいかけ声。首を回す、早口言葉など、観客も参加。「身体、声、感情」に焦点をあてた演劇の練習が行われ、舞台側には手話通訳の方も。「どじょうにょろにょろ 三にょろにょろ‥」なんていう早口言葉は左右のスクリーンに映し出され、私たちもみんな挑戦したが、難し~。そんな和気あいあいとした雰囲気。

 

次に「ガラスの動物園」の最初の場面の稽古に移行。‥と思ったら、その流れでいつの間にかお芝居本編が始まっていた。

 

ローラ~黄色いスカーフ、アマンダ~赤いエプロン、トム~眼鏡、ジム~青いベスト。

前方の長机に置かれている小道具、それを纏った役者が、その役を演じるという仕掛け。

舞台上には、机らしきもの、ベンチ、それくらい。

 

黄色いスカーフを首に巻き登場したのは、若い青年(車椅子ユーザー)。不況時代のセント・ルイス。年頃の娘ローラは脚が不自由で、そのせいで引っ込み思案。ビジネス・スクールに通うふりをして欠席していたことが、母・アマンダにばれるところから始まる。舞台上の黄色いスカーフの青年が、自然にローラになり、ローラ以外の何者でもないローラそのものであることに、不思議だとも感じずに引き込まれた。

 

暗めの照明に、頬の白さが際立ち、内気でおどおどした様が現われていた。セリフのトーンや、視線の動きで繊細な感情の揺れが伝わってくる。

 

母・アマンダは赤いエプロンをして、ガミガミ、神経質な質らしい。ローラの弟はトム。不本意ながら、倉庫の仕事に従事している。眼鏡をかけて出て来たのは、倉品淳子。ワークショップの時の大らかさとは打って変わって、トムの鬱屈した様子をダイナミックに演じていた。

 

「一生懸命育てた挙句、くそ婆あなんて言われて‥」劇中、アマンダがつぶやくそんな風なセリフに客席からは苦笑が漏れていた。ほかにも、観ているものの心に刺さるようなセリフがそこここにあり、「ガラスの動物園」は初めて観たが、とても現代的な芝居なのだと知った(今更ですが)。結婚もせず特技もない娘を責める母親のセリフなんかも、なかなか辛辣。

 

チラシから察するに、ローラ役は廣田渓、アマンダ役は山口恭子。

 

ローラを訪ねてくる「青年紳士」は実は彼女の高校の同窓生(同級生か?)・ジム。青いベストで登場は、倉品淳子と山口恭子の二人。二人で一つの役を演じたのだが、これもまた不思議と不自然ではなかった。二人で演じることにより、ローラのジムへの憧れの気持ちが倍増されていたような。山口恭子氏は、早口言葉もすごかったし、お芝居では母・アマンダと青年・ジムの二つの役を演じ分け、達者な方だなと思った。シニアの方だとお見受けしたが、キャリアが長いのではと感じた。

 

それぞれが、もやもやしたものを抱え、それが、静かな舞台の上で染みるように伝わってきた。身につまされるものも感じ、原作の戯曲も読んでみよう思った。

 

正直、観劇前は若干身構えるような気持ちがあったが、気づいたら、純粋に一つのお芝居として作品世界に入っていた。

 

そもそも性別、年齢、国籍などなど、役の属性とは違う属性の人間が各々演じているのに、その役の人にしか見えないのはどうしてなんだろう、と後から思い返し、演劇の奥深さの一端を見た思いがした。

 

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P.S.

先週の木曜(2/13)に、NHKのローカルニュースで、この公演のちょっとした特集がありました。その情報をぎりぎりのタイミングで知って、辛うじて最後の部分‥福岡公演のあとの東京公演も好評のうちに無事終了‥というところだけ見ることができました。

(テレビをつけた時、猫がドアップで映ってたんだけど、あの猫ちゃんは誰だったのかも気になる~)