一年前に観た舞台 『VAMP〜魔性のダンサー ローラ・モンテス〜』

そのうちアップしようと思いつつタイミングを逸して、季節が一巡りしてしまった‥
今、検索してみたら、“衛星劇場”というチャンネルで10月にこの舞台の放送があるみたい。




『VAMP〜魔性のダンサー ローラ・モンテス〜』

演出:岸谷五朗  原作:桐生操(「魔性のダンサー ローラ・モンテス」)
脚本:浅井さやか
出演:黒木メイサ中川晃教水田航生新納慎也中河内雅貴早乙女太一橋本さとし
日時:2014年9月8日(月)15時〜
会場: EX THEATER ROPPONGI(東京)

魔性のダンサー ローラ・モンテス 


〜自然体の小悪魔 ローラ・モンテス・黒木〜


ローラ・モンテス。19世紀、ヨーロッパに実在した女性らしい。伝説の悪女なんだそう。
16の時の最初の結婚は駆け落ち。それが破局するとダンサーに転じ、ベルリン、パリと流れながら、その美貌で男たちを虜にしていく。遂にはバイエルン王国の王をも魅了し、彼の愛人となり政治の世界まで影響を及ぼすようになる‥。そんな彼女の激動の半生を描いた舞台(半分ミュージカル)、主役のローラは黒木メイサが演じた。

冒頭はローラのお葬式のシーン。参列しているのは彼女を愛した5人の男たち。教科書に名前が出てくるような有名人も。

次の場面からは、ローラとそれぞれの男たちひとりずつとの愛憎のドラマがオムニバス形式で繰り広げられていった。

黒木メイサが自然な美しさでスキャンダル女王を飾らずに演じていて、話はこてこてなのに同性からみても嫌なかんじはせず、本当にきれいだった。

ひとりの女性の内面まで深く掘り下げるというよりは、暗い灯りのなかで欧州歴史絵巻がシックで華麗にショーアップされているという印象を受けた。


男性陣の顔ぶれは、初めの結婚相手トーマス・ジェームス(水田航生)、作曲家のリスト(中川晃教)、作家のアレクサンドル・デュマ新納慎也)、ジャーナリストのアレクサンドル・デュジャリエ(中河内雅貴)、バイエルン国王・ルートヴィヒ1世(橋本さとし)‥と、歴史上に名を残した大物が名を連ねる。
もう一人の出演者・早乙女太一は、ローラの心の中を現わす“闇”という役どころ(友情出演)。

彼らには舞台上でそれぞれ象徴となる花と色があり、トーマス:ガーベラ・ピンク、リスト:ラベンダー・紫、デュマ:マリーゴールド・オレンジ、デュジェリエ:バラ・深紅、ルートヴィヒ1世:エーデルワイス・白。
男の登場場面により色調が変わり美しかった。男性遍歴とともにローラの態度や振る舞いも変化していく。衣装も変わっていき、そこは楽しめた。


まずワタクシのご贔屓の中川晃教だが、彼が演じるリストは、渋い芸術家。「愛の夢」を始め何曲かピアノで華やかに演奏。そのピアノの上で黒木メイサが妖しく、うっふんダンス、リスト・中川はピアノを弾きながらそのまま二人の過激なラブシーンなったのには呆気にとられた。「ラ・カンパネラ」も流れていた(か、弾いていたのか記憶が曖昧)。
歌は2曲あり、いずれも熱唱タイプの曲で、晃教くんの歌唱力が充分発揮されていた。場面転換の時に歌われた「君の中に生まれた闇」、歌声が客席を圧倒&制覇。そうこなくっちゃ、という歌いぶりだった。


初恋のお相手トーマス・ジェームス・水田航生は、とても初々しく、この時の黒木・ローラはまだウブだったので可愛らしいカップルだった。


アレクサンドル・デュマ新納慎也のシーンはなんと喜劇仕立てだった。笑わないローラを笑わせてみせるという筋で。


深紅のバラのイメージ、アレクサンドル・デュジャリエの中河内雅貴はセリフに力強さがあり惹きつけられた。「くだらないものは・・・」という口癖を、観客席に向かい正面切って大声で言う。見ている方も集中力が上がった。髪型はオールバックで野性的な風貌、黒っぽい衣装で、ローラとフラメンコダンスを踊る。メイサのローラは赤い衣装。なかなかの雰囲気のダンスだった。


舞台から客席に降りてロック調の歌をがんがん歌い、全900席をすっかり乗せてしまったのは、バイエルン国王・ルートヴィヒ1世を演じた橋本さとし。白い衣装がお似合い。歌もさすがだったけれど、黒木ローラの魅力に、ふら〜っとまいってしまう瞬間など、それまでの威厳ある態度とは打って変わって脱力の様子、うまいなぁと思った。


ローラの内なる“闇“である早乙女太一、切れ味のある殺陣。すごかった(当たり前かもしれないけど)。


ただ、ローラ自身が内面の葛藤〜母親のようにはなりたくないのに、そうなっていってしまう〜を独白で語るシーン2,3回あり、それもテーマだということはわかったが、少々唐突で冗長なかんじがした。

エロティシズムを醸し出すタランチュラダンスや、天井から吊るした布にぶら下がり舞う大技も披露したローラ・黒木、全篇にわたりあざといかんじはせず、むしろ清潔感さえ漂う。潔さからくるのか。
生成りの木綿〜つるつるのシルク〜妖艶なビロード‥と変化していく布を連想した(そんな布はないが)。

黒木メイサの持って生まれた魅力が、天然のまま輝いていた“ショー”だった。そして、そのショーの鑑賞者、99%は女性が占めていた(含む:自分)‥。舞台愛好者の男女比を考えると必然的にそうなるのだが、奇妙といえば奇妙かも。そんなことも改めて感じた。