あなたにとってミュージカルとは‥   中川晃教・談

昔、ミュージカル嫌いのタモリが言っていた。「何で突然歌い出すんだ?」
そう言われれば確かにそうで、突飛と言われれば突飛。
けれど自分が住んでいる街でもミュージカルの観劇チャンスが増え、気づけばわりと観ている。以前は何となく敬遠気味だったのに、今は好きかも。
なんで?


「夢、希望、楽しくて、わくわくしてドキドキして、
劇場に足を踏み入れたその瞬間から、劇場をあとにするまで夢の世界で、
でも、今の自分もちゃんとそこにいて、
また観にいきたいと思わせてくれる。
それが僕にとってのミュージカル。」


そ、そうだ。その通り。私が思っていたことを言われてしまいました。


asahi.com」のインタビューで中川晃教の言葉。
http://www.asahi.com/showbiz/stage/spotlight/OSK201106010029.html
インタビューの様子がYou Tubeで配信されている。


この中で「でも、今の自分もちゃんとそこにいて」というところがポイント。


日本人が、金髪のカツラつけてたり、王様やお姫様の格好してたり、人間じゃなくてドラキュラや動物になることもあるし、その上、歌ったり踊ったりする。
それでも楽しい。心が躍る。
でもそれだけじゃなくて、時代・舞台衣装・キラキラ照明全てを飛び越えて、今の自分たちに思い当たるものがあるから惹かれるんだと思う。(家族、友情、恋愛、人生、‥権力、陰謀‥などなどチラシに載るような言葉群で表わされるもの。)


まぁそもそも、ミュージカルに限らず面白い舞台には必ずそういうものがあるといえるんだけど、音楽も含めて舞台が大掛かりな分だけ、親近感を感じたときのギャップがダイナミック。それもミュージカルの醍醐味の一つ。突如歌い出すという垣根を、垣根と感じなくなった者にとっては。

もちろん、楽曲、歌、演奏を楽しむというのもあるけど。


ミュージシャン・中川晃教出演のミュージカル「風を結んで」東京・シアタークリエで上演中。「asahi.com」の記事は、この公演の関連のものだ。明治維新後の社会が大きく変動する時代に生きた、元・侍の若者たちの話だそうだ。日本オリジナルのミュージカル。
http://www.tohostage.com/kazewo/index.html


思えば、6,7年前に博多座で、彼が主演のミュージカル「モーツァルト!」を観たばっかりに、私の舞台好きに火がついてしまったのだ。
劇場を震わす圧倒的な歌唱力と、ひたむきな演技。
その時、ステージから直球で火の玉を投げられてしまったのだった。



「あなたにとってミュージカルとは」と、演ずる側の出演者に質問しているのに、その答えは観客側の自分が、思っていたことそのものずばりだった‥

こういうちょっとしたことも、自分に引き寄せて喜んだり感心したりする、ファンとはそういう生き物。