梅雨なのに、今のところ雨の日が少ない。大雨は困るけれど、梅雨は梅雨らしく…ね☔
COVID-19の影響に端を発し、観劇から2年半くらい遠ざかっている。
好きな劇団イキウメの公演も、ネットニュースなど指をくわえてみている。が。
5~6月の公演「関数ドミノ」は、以前、イキウメの劇団上演ではなくプロデュース公演で観たことがあり、その時の感想が、なんとパソコンのファイルの奥地から出てきました。
なので、3年半前の観劇レビュー、アップします。
既にDVDも販売されています。
~~~~~~~~~2017年版です~~~~~~~~~~~
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『関数ドミノ』
作:前川知大
演出:寺十 吾(じつなし さとる)
出演:瀬戸康史、柄本時生、小島藤子、鈴木裕樹、山田悠介、池岡亮介、八幡みゆき
日時:2017年10月21日(土) 18時~
会場:北九州芸術劇場 中劇場
もともとは劇団イキウメで上演されていたお芝居を、劇団公演ではなく、新たなバージョンで上演されたものを観に行った。イキウメ版は未見なのだが、2005年、2009年、2014年に上演されている。
舞台上はカウンセリングルーム。カウンセラーは白衣の女性(千葉雅子)。相談者の若者は、カウンセラーの友人の息子。自らの意思でここに来たわけではなく、母親に言われてカウンセリングを受けるようになったらしい。常にいらいらしている様子のエキセントリックな雰囲気の青年だ(瀬戸康史)。
世の中には、超常現象を起こすほど運が強い人間と、その人間の存在によって日の目をみることができない者がいる、という不条理なしくみがある‥‥。彼は、ある不思議な交通事故を目撃したことから、そんな妙なことを強く本気で信じ込むようになり、自分は今まで、そのしくみのせいで割を食ってきた、と思っている。
そして、周囲を巻き込んで、運が強すぎる人間の監視を始め、どこまで運が強いのか、オカルト的な出来事を起こすことができるのか、実験をしかける。‥‥
劇団イキウメのお芝居は、気づいたら日常から非日常にずりずり滑り落ちていて、そこで人間ドラマが静かに不気味に繰り広げられて、とても引き込まれるのだが、今回、イキウメのお芝居を、イキウメじゃない人たちが演じるのを初めて観た。イキウメの俳優たちは、イキウメの世界観をいわば身に纏っているが、そこを一般の俳優たちがやるのだ。そうなると、のっけから、いびつでぎくしゃくしていて却ってドキドキした。今風の顔の小さいイケメンたちが、このエグい世界を演じることによって、逆にコワさが増した。特に、瀬戸康史が、かんじのワルい若者を好演(かんじのワルさを好演って…逆説的?)。顔がきれいで、なのに偏執的なこういうタイプは何だかそこらへんにいそうで。
舞台は、左半分側と右半分側にそれぞれ台があり、装置自体はあまり変わりがないのに、左と右が対照的に感じられて印象的だった。(右側の奥になぜか丸ストーブ。懐かしい。)
ストーリーの設定は突飛だが、人間の表皮を一枚むいて露わになる欲望、嫉妬…に焦点が当たり、目が離せなくなる。決して明るい話ではないが、観劇後に薄荷の味が残るような気がするのは、これまで観たイキウメ作品と同様。
因みにチラシの前川知大氏の言葉によると、「戯曲『関数ドミノ』には2009年版と2014年版があり、今回の上演は09年版を使います。…(略)…14年版よりも09年版の方が少しだけラストに希望があるんです。…」ということだった。