ロンドンの夕やみに浮かぶ芝居小屋 座長はフレディ「ボヘミアン・ラプソディ」
NHKーFM(ラジオ放送)、日曜夜9時のディスカバー・シリーズ。
1年めマイケル・ジャクソン、2年めビートルズにつづく第3弾クィーンだったが、先週の日曜に惜しまれつつ最終回を迎えた。
一年間通して、一人or一組のアーティストにスポットを当てて、楽曲の魅力や秘密を深掘りしたり、各界からファンを招いてトークをしたり…など充実の内容の番組。
クィーンはもちろん好きだけど、熱狂的というわけではなく、自然に耳に入ってくる音楽の一つだったが、この一年、番組を通しておつきあいして、とても身近で不思議な存在になった。
クィーンのデビュー当時、私は中学生だったのでヒット曲はリアルタイムでほぼずっと耳にしていたが(……って世代がバレる。そんなお年頃です)”聖歌隊ロック”と勝手に名づけてたりしてたけど、そこから一歩親近感が増したというか。
毎回、番組のオープニングにパーソナリティのサンプラザ中野くんが高らかに宣言。
「ヘンなのにナンバーワン ロックバンド QUEEN」
… … … ヘンだったんだ、と、合点がいったようないかないような。
番組が終了するにあたり、3月にQUEEN短歌が募集された。
全部で560首余り集まったとか。先月末の3時間特別番組の際に、サンプラザ中野くんが全ての短歌を紹介したいと意気込んで超早口で読み上げ。そんな10分~15分のコーナーが2回くらいあったけど、さすがに全部というわけにはいかなかったよう。
作品は番組HPに掲載されている。
(こんな大量の短歌が読み上げられたなんて、聴いている時も驚いたけど改めてびっくり。中野くんの肺活量って……。そしてすごいクィーン愛の作品群)
実は私も張り切って二首送って、読み上げられたのは一首。
それが冒頭の歌。
(応募作から推敲して一語変えています)
これは、番組の準レギュラーだった朝日順子さんのお話に触発されたもの。朝日さんは洋楽の歌詞解説などを手がけている方だそう。このラジオ番組ではクィーンの歌詞について背景を含めて解説するという回が何回かあって、それを聞いて、月並みですが、目からウロコ…となった。
それは昨年7月の放送だった。アルバム『オペラ座の夜』が取り上げられた回。収録曲「ボヘミアン・ラプソディ」の解説で、イギリスの芸能の根幹にあると言われる「ミュージック・ホール」の存在というものが紹介された。
大衆向け演劇小屋のようなところでバレエ、オペラ、コミックバンド….などが披露されるんだとか。かつてあったものなのか、現在もあるものなのかは、ラジオのお話ではよく聞き取れなかったが、「ボヘミアン・ラプソディ」はそのミュージック・ホールなるものの影響を受けているのでは…という指摘だった。
なるほど~。
私は普段、洋楽の場合は歌詞の意味を気にとめず(英語だからわからないので)聴いているという恥ずかしながら雑な音楽ファン。が、映画「ボヘミアン・ラプソディ」を観たとき、曲に合わせて歌詞の日本語字幕が表れて驚いた。
こんなに奇妙キテレツな歌だったなんて。
その謎を解くカギを朝日さんが教えてくれた。
大衆オペラ的なものをイメージするとしっくりくる。
朝日さんは英語も流暢でかっこいいしゃべり。
「ミュージック・ホール」の存在は、ビートルズも影響を受けているという話もあり、
なるほど~。
普段は英語の歌詞は気にしない私ですが、前回2年前の「ディスカバー・ビートルズ」では、アルバムの歌詞カードを目で追いつつ聴いていた。(アルバム持っている分のみ)
そこで、何だ?この歌詞は…?っていうのがいくつかあったけど、それもこの背景から考えるとしっくり。(たとえば、アビイ・ロードの3曲め「マックスウェルズ・シルヴァー・ハンマー」とか。能天気な曲調にホラーな歌詞…)
”イギリス芸能の根幹”と言われていたので、とっても心強い補助線だと思う。
奇しくも番組の最終回で、サンプラザ中野くんも、印象に残ったこととして、朝日順子さんの「ミュージック・ホール」のお話のことをあげていた。
しかし。この番組を話題にしたことで、何十年来の親しい友人が実はクィーン・ファンだったことを初めて知った…ということがあった。ある友人は、高校の時、コンサートに2回も行った(九電記念体育館)とか、また別の友人は、やはり高校の時、初めて部屋に貼ったポスターがクィーンだった、とか…。そうだったの?知らなかった!
作編曲家の西脇辰弥さんはキーボードなど楽器を持ち込んで曲の解説、パッパラー河合さんの「歌は聴き手のもの」という箴言、などなど味わい深い番組でした。
4月からのディカバー・シリーズ第4弾は「カーペンターズ」。また、楽しみ…と喜んだその後に、放送時間の変更を知った…。日曜午後3時5分~NHK第一だそう。
日曜は、ほぼ勤務。聴き逃し配信ではなく放送時間にリアルタイムで聴くのが好み…なので、ディスカバー・ロス。
ところで、二首出したクィーン短歌、もう一つの方は。
逆走のジェットコースター美しく 十四の春の「キラー・クィーン」
初めてクィーンを聴いたときの衝撃の瞬間…でした。