FIRST DATE

一ヶ月半前に観た舞台。
が、一ヶ月半前といっても昨年12月なので、とても前のことのよう‥(と、年の初めに早くも遠い目)



ミュージカル・コメディ『FIRST DATE』

脚本:オースティン・ウィンズバーグ 
音楽・作詞:アラン・ザッカリー&マイケル・ウェイナー
演出:山田和也   音楽監督:島 健
出演:中川晃教新妻聖子藤岡正明、昆 夏美、古川雄大、未来優希、今井清隆
日時:2014年12月6日 17時〜
会場:サンケイホールブリーゼ(大阪)


〜ニューヨーク発 婚活デート・ミュージカル〜


ブロードウェイで‘13夏から’14.1月初めまで上演されていたミュージカル・コメディ。その日本版『ファースト・デート』。楽しそうではあるけれど、アメリカの恋愛ものっていうことで一抹の不安もあった。このテーマでお国柄が違うと、ちょっとしたことで気持ちがのらないこともある。アメリカのラブ・コメ映画でも“運命の人”探しっていうのがやたらと前面に出てくるし。(自分の年齢を考えるとアメリカだろうが日本だろうが若者の恋バナにあれやこれや言うのはどうかとも思うけれど、舞台は現実を忘れさせてくれるものだから、その点はここでは措く)

しかし結論からいうと、観劇前のそのような心配は杞憂だった。
そこらへんにころがっていそうな話が、大袈裟に歌って踊ってショーアップされて。スピード感もあり。
なんだか、知り合いの合コンの話を聞いているようでおかしかった。あはは。
笑って楽しんで、しんみりして、また笑った。そんな舞台だった。


ブラインド・デートとは


全く初対面の者同士のデートを、「ブラインド・デート」と呼ぶのだそう。日本でいったら、紹介人の付添なし・お見合いデートのカジュアルなやつ‥だろうか(何だそれ?)


舞台はニューヨークのレストランバー。そこで繰り広げられる、ある男女のブラインド・デート
お堅い金融マンのアーロン(中川晃教)と奔放な写真家のケイシー(新妻聖子)。二人を見守るウェイター(今井清隆)。

ケイシーの姉・ローレン(未来優希)が妹を心配して、しっかりした職業の男の人と引き合わせるデートを企てたのだった。


アーロンというのが、女性側からみると、まぁ合コンに現われたはずれ男。
これが、中川晃教、意外に合っていた。まじめで張り切り過ぎ。スーツにメガネ姿でお店に駆け込んで来て、まずウェイターに服装チェックをしてもらう。ネクタイはとった方がいいとアドバイスされる。(相手が来る前でよかった。)
デート中の会話も一生懸命過ぎて、空回り気味。そこらへんが軽妙で二人の噛み合わなさが笑いを誘う。


ケイシーはパンク・ファッションですか、あのナリは?髪も赤くてタンクトップにミニスカート、黒いストッキング。男の人との付き合いに慣れていて、アーロンをおちょくる。イヤな女。肩を上げて西洋人風の身振り手振り(西洋人の役だけど)。新妻聖子がこんな役を、すんなりハマってこなすなんて驚き。


二人のデート中、アーロンの友達ゲイブ(藤岡正明)、ケイシーの姉・ローレン、ケイシーの友人・おネエ・キャラのレジ―(古川雄大)たちのアドバイスがちょくちょく入る。アーロンの元カノ・アリソン(昆 夏美)の影もよぎる。だが、彼らは皆、実際にはそこにはいない。二人の妄想の中しゃべっている(または、歌っている)。その展開が面白い。
彼らを演じる俳優たちは、レストランのお客さんとしてテーブルについていて、イマジネーションの場面になると、それぞれの役になりきる。シーンが様々なので一人何役もこなしていた。

7人の出演者全員、歌も踊りも上手なので、存分に楽しめる。


主役二人のノド自慢、デュエットも吉


中川晃教は今回はリズミカルな歌が多かった。彼にとってはキーが低いのかなというような曲も何曲かあり、またバラード曲も聴きたかった気もするけれど、役柄と軽快な曲が合っていたし、弾むリズムのボーカル、いつもながらよかった。心が躍った。


新妻聖子の役は、軽快な曲とバラードと両方あった。伸びやかな声のバラードに客席はし〜んと静まり返った。華奢な体のどこからあの声が。声を伸ばしている時、細い喉が鳥のように上下に揺れていた。蓮っ葉なケイシーを演じていても、けなげさは現われてしまう。美しい歌声だった。


アーロンとケイシー、お互い過去の触れられたくない出来事を少しずつ話始め、距離が少しずつ縮んでいく。生い立ちを語る場面に登場したアーロンの母(未来優希)の歌に私は泣かされた。


ステージ上は全面レストラン・バー、2層のつくりになっている。背景は摩天楼の影絵。2階がカウンター席で初めここで二人がしばらく話をして、食事という時に階段を降りて1階フロアのテーブルに移った。おしゃれな空間だが、妄想のシーンではそのたびにがらりと印象が変わりダイナミック。(美術:中根聡子)


ケイシーの友人役レジ―を演じた古川雄大、こういう役は初めてだったのではないだろうか。ゲイなのか、内面が女性である人なのか、劇の中だけではわからなかったが、女友達が悪い奴とデートしているんじゃないかと心配して、何分かおきに彼女に電話をかける、そのたびにハイテンションな歌と踊りが披露され、八頭身に長い手足で弾けていた。友達を思いやりつつも探りを入れているようでもあり、ライバル心も見え隠れ‥と深読みしてしまう私は屈折しているのかもしれないけれど、そんな心情にはしみじみ共感できた。あのテンションにしみじみしてしまったのが不思議。


藤岡正明は、ゲイブのワイルドさを熱演、アリソンの昆夏美も、小柄で可愛いけど油断できないな‥というタイプの女の子を嫌みなく演じていた。
やさしく見守る(たまにしゃしゃり出てくるが)ウェイター・今井清隆の歌声が低く響くと、舞台全体に安定感が出る。


若い人の恋愛だけの話に終わらず、楽しい中にも、時折人の心の機微に触れるところがあり、でもおかしいネタはネタで色々あり、後から気持ちよく思い出し笑いできる舞台というものはいいものだ。